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阿部真央、新たなフェーズに突入。 　プライベートレーベルKAGAYAKI RECORDSからの第1弾リリースは、新曲「I’ve Got the Power」を含むアコースティック・アルバム『Acoustic -Self Cover Album-』。「ロンリー」「貴方の恋人になりたいのです」などの代表曲をアコギ、ピアノなどの生楽器を中心とした編成で再レコーディングした作品だ。

　先行配信された「I’ve Got the Power」は、阿部真央の真骨頂であると同時に、新しい表現の訪れをはっきりと感じさせてくれる楽曲だ。繊細なピアノの和音、凛とした響きをたたえたキックとともに放たれるのは〈I’ve got the power　終わりの狭間で見た/息吹が頬を撫でた〉というライン。多くの別れを経験し、痛みや憤りを感じながらも、〈どこまでも行ける　今の私ならば〉という決意を力強く歌うこの曲は、阿部真央自身の活動環境の変化とリンクしているという。
「この曲を書いたのは、デビューからずっとお世話になっていた事務所から独立することになった時期なんです。まずサビのメロディが浮かんで、「どういう曲になるんだろう？」と思いながら少しずつ作っていったんですけど、とにかく、今感じてることを正直に書いてみようと思って。そのときに出てきたのが、「終わりの狭間で見た」という歌詞。独立するときに「ここで1回終わるんだな」と感じたし、そこで初めて見えるものがすごくあったんですよ。しっかりと終わりを受け入れたからこそ新しい道が見えてきたし、手を差し伸べてくれる人、変わらずそばにいてくれる人、去ってしまった人の顔も見えて。そういう経験をしたからこそ、「どこまでも行ける」と歌うことができたし、新しく始めることができたんだと思います」

　ギター、鍵盤などの生楽器の響き、そして、ヒップホップ〜R＆Bのテイストを反映させたサウンドメイクもこの曲の魅力。トラックを手がけたのは、阿部真央の作品に初めて参加したMori Zentaro（SIRUP、iri、香取慎吾などの楽曲を手がけるトラックメイカー/プロデューサー）だ。
「この曲のアレンジャーを誰にお願いしようか？とKAGAYAKI RECORDSのスタッフのみなさんに相談して、そのなかで名前が挙がったのがMori Zentaroさんだったんです。私の音楽よりも明らかにドープなことをやっている方なんですけど、“この曲をアレンジしてもらったら、絶対にカッコよくなる”というイメージがあって。今まで以上に“こういうサウンドにしたいです”ということを伝えさせてもらったんですけど、想像以上の仕上がりになりましたね。自分でも“めっちゃイケてる”って思うし(笑)、自分のなかにあるイメージが具体的に形になったことは自信につながりました」

　アコースティック・アルバム『Acoustic -Self Cover Album-』のレコーディングは、「I’ve Got the Power」と同時進行で行われた。レコーディングメンバーは、アレンジも手がけた和田健一郎（Ｇ）、ミトカツユキ（Key）、吉田佳史（Dr/TRICERATOPS）、ぬましょう（Percussion）。
「スケジュール的には大変だったんだけど(笑)、スタジオの雰囲気がすごくよくて、本当に楽しかったです。ライブのアレンジを作ってるのに近い感覚で、“こういう音を入れてみよう”“それいいじゃん”みたいな遊び心もあって。私がやりたいことを遠慮なく言えたのもよかったですね」
「ロンリー」「貴方の恋人になりたいのです」などの代表曲を再び歌い直すことで、“これまで”と“今”がつながり、原曲の新たな魅力を体感できる。これこそが本作の最大の魅力だろう。
「昔の自分になろうとしないで、今の自分がやりたいこと、チャレンジしたいことに集中できたのはよかったですね。たとえば『MY BABY』は私が初めて書いた曲で、デビューアルバム（「ふりぃ」/2009年）にも入っているんですけど、当時よりも全然、高い音が出せるようになってるんです。もともとアコギと歌だけでやっていた「嘘つき」をピアノでアレンジしたり、弾き語りの定番の「じゃあ、何故」をさらにブラッシュアップしたり、ちょっと意外な「お前が求める私なんか全部壊してやる」をアコースティックでアレンジしたり。ファンのみなさんが好きでいてくれる曲が多いので、ぜひ楽しんでほしいですね」
　10月にはアコースティックツアー『阿部真央 Acoustic Live Tour “I've Got the Power”』を開催。新曲「I’ve Got the Power」、アルバム『Acoustic -Self Cover Album-』によって新たなスタートを切った阿部真央。奥深さと斬新さを感じさせる彼女の音楽はここから、さらなる進化を遂げることになるだろう。
「『I’ve Got the Power』は、その人のなかにある力を沸き立たせてくれる、もともとの強さを思い出せるような曲になったらいいなと思っていて。アコースティック・アルバムはリラックスして聴いてほしいんだけど、みなさんが本当に進みたい方に気持ちが向くといいなという思いもあるんです。私がやりたいのは、みんながそれぞれの人生のなかで、輝ける方向に進むための音楽。それはずっと変わらないですね」 text by 森朋之